陽明山

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陽明山は台北市の北にある高原地帯で、700メートルから1000メートルクラスの山々からなっている。

陽明山公園はよく整備されていて、花壇は手入れが行き届き、木陰の散策は気分がいい。
渓流が時には滝になって流れ落ち、小さい四阿(東屋・あずまや)があちこちにあり、
休憩したり、食事をしたり、瞑想にふけることもできる。
たくさんの木々は南国らしく豊かに葉をつけ、高原の涼風にそよぐ。
野鳥がホロリン、ホロリンと囀っている。澄んだ耳慣れない音が高い梢で響く。

終点の陽明山公園からさらにマイクロバスに乗り、山の奥まで入っていくと数々のハイキングコースがある。
それぞれ野鳥や高山植物の鑑賞、池や湿地帯、眺望のよい場所などの特徴がある。
”蝴蝶花廊”というコースは幸運なら、無数の蝶が群舞するさまを見られるという。
このあたりは高度もあり、霧が出ると肌寒いくらいだ。

かつて訪れた二子坪というコースは、私にとって格別な場所だ。
ここで初めて台湾人の友人ができたのだ。
彼女からは野鳥の名前や、草花の名前をたくさん教えてもらった。
一目でお互いが気に入り、今でも付き合いは続いている。
台北に行く楽しみの一つは、その大切な友人と会うことである。

その日私は一人で陽明山に出かけた。
陽明山公園までは台北駅からバスで50分程度で着くが、
私は地下鉄で剣潭駅まで行った。それからバスに乗る。
この駅はたくさんのバス停があり、大勢の人で混雑している。

駅前の広場にはハイキング姿の人があちこちにいた。
みなナップザックに大きな水筒を入れている。
数人で座り、雑談をしている中年男性の1人に声をかけた。
「陽明山に行くバスは何番ですか?」
私のつたない中国語を聞くと、「日本人ですか?」と聞き返された。
親切な彼らは口々に英語で説明しようとする。
でも、それでは話しかけた意味がない。

メモ帳とペンを出し筆談に移った。
男性の一人が、ほれぼれとするようなきれいな字でこう書いてくれた。
「跟我们走?我们在半路下车‥‥」
私達は途中で降りるけど、一緒に行きませんかと、誘ってくれたのだ。
「今日は14人で行く。まだ集まっていないからここで待っててください」

少しずつメンバーが集まりはじめた。
3人組みの女性たちが来た。私と同じくらいの年恰好だ。
姿勢のよい活発そうな人、温和な笑顔の人、ほっそりした色白の少し若い人。
紹介してくれたので、筆談交じりでおしゃべりを始めた。
ことばを発しても、アクセントが違うとなかなか通じない。
相手のことばも早くてわかりにくい。
すると相手は私のメモ帳をひったくるようにして字を書いてくれる。
一瞬で意味が通じ、お互いに深くうなずきにっこりする。

年齢の話になった。姿勢のいい人は私と同じ寅年だと分かった。
はつらつとしてとても若く見える。
私はびっくりして「很年轻・とても若い!」と言い、私の頭を指差して「白髪baifa」と言った。
すると彼女はすかざず、メモ帳に一言「自然」と書いた。
彼女の黒々とした髪は染めているのだそうだ。

バスは中国文化大学を経由するので、車内は大勢の学生で混み合っていた。
私たちの周りにもぎっしりと学生が立っている。
彼女は私を学生たちに紹介した。「この人は日本人で1人で旅行している」。
周りの学生はうなずき、小さい声で「你好」と言い目礼してくれた。

それから車内で発音練習が始まった。
私が話しかけると、発音やアクセントを直してくれる。
お互いに一生懸命になるあまり大声になってしまう。

笑顔の温和な彼女は、私をじっと見つめて「你是很勇敢」と言った。
ヨンカン?なんだろう。すると指で空間に「勇敢」と書いた。
1人で旅行するなんて勇敢でファイトがあるとほめてくれたのだ。

街中を抜けるとバスはぐんぐん登っていく。
カーブが多く目が回りそうだ。眼下の風景が小さくなる
やがて彼らが降りる停留所に到着した。
降りるときには一人づつ、握手したり、親指を立てて励ましたり、肩をたたいたりしてくれた。
そして走り出すバスを手を振って見送ってくれた。
# by bajiao1313 | 2009-08-21 12:40 | 台湾 | Comments(6)

うなぎ

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去年から始めた梅干作り、今年の出来栄えもなかなか。
梅酢が上がり、赤紫蘇で美しく色づいたが、
天候不順でからりと晴れた夏がなかなかやってこない。
梅干は強烈な真夏の日差しに三日三晩あてて、最後の仕上げをする。
この梅を干す作業が大好きだ。

昨日は午後からすっきりと晴れたので思い切って干した。
なんともいえない梅の芳香。赤紫蘇のいい色。

ありがたいことに今日も晴天で、湿気が少ない。
ずいぶん乾いて表面が白っぽくなってきた。
一粒、つまんで口に入れたいくらいの見事な梅干だ。
自家製の梅干は本当においしい。

梅干の (注)食べあわせ は鰻。
梅干を引っくり返しながら昔のことを思い出した。
父は釣りが大好きで、鯉やフナなどを釣ってきては池に放していた。
鯉は悠々としているので泳がせておく。
フナは七輪で焼いて酒の肴にする。
よく庭で1人で、楽しそうに作業をしていた。

ある時期うなぎ釣りに凝った。
器用で集中力があり、眼一杯努力する父だったので、
ほとんど毎晩のように出かけて行っては、うなぎ獲得に執念を燃やしていた。

そして毎回のように、うなぎを何匹も釣り上げてくるようになった。
天然のうなぎは腹が黄色くてよく太り、ぬめぬめ、にょろにょろと活発に動き回る。
長さは7~80センチもある大うなぎ。
母は気味悪がって遠巻きに眺めているだけ。妹もあまり関心を示さない。
大漁の喜びを共有するものは、飼い犬のペスだけだ。

雑食性のうなぎは、金魚やめだかを食べていまうので池に入れられない。
大きなたらいに水をはり、倉庫に置いて数日間泥を吐かせる。
たらいに沿って体を丸く曲げた大うなぎが数匹。

このうなぎたちが元気一杯で、夜中に逃げ出す。
朝、たらいが空っぽになっている。
床にあとがついているのでたどっていける。
たいてい隣の家の庭で、泥まみれで白くなったうなぎが発見された。
「また逃げてきましたよ」などと、お隣さんが知らせてくれることもあった。

父は大きい順から「金、銀、銅」などと名前をつけていた。
鯉の場合は下に太郎がつく。「銀太郎」とは二番目に大きい鯉ということになる。
うなぎはすぐ裂いてしまうから、太郎はつかない。
「そろそろ金をしめるか‥‥」などと父がつぶやくと、うなぎは運命の時を迎える。

泥を吐かせたうなぎは庭の流しで父が捌く。
専用のまな板に暴れるうなぎを乗せる。
頭に急所があってそこをぎゅっとつかむとおとなしくなるらしい。
その頭を、釘でトンと打ち付け、すかさず小刀でスーと腹を割き、骨をとる。
実に鮮やかな手際であっというまだった。

切り身になったうなぎは庭の七輪で焼く。油が落ち、煙が上がる。
ペスが鼻をくんくんさせている。
切り身は特製のたれに漬けては、何回もあぶり焼きにする。
時には蒸してみたりして、研究熱心だった。

夕食にうなぎの蒲焼が出る。艶々して大きい身。
母はもちろん箸をつけない。
そこで、長女の責任(勝手に自分で思い込んでいた)として私が食べる。
ごりごりして、甘辛で、噛み切れないほど厚くて、かたくて‥‥。
何も考えないようにして食べたから、味はあまり覚えていない。

後年、うな重をご馳走してもらい、あまりの違いに愕然とした。

(注)食べ合わせ:食い合わせともいう。いっしょに食べてはいけない食べ物の組み合わせ。
昔はお腹をこわして亡くなる子どもや、チブスなど消化器系の病気が多かったので、
消化の悪いもの、油分の多いものを食べるときはとても気をつかった。
西瓜と天ぷら、タニシとそば、その他色々。夏の食品に多い。
# by bajiao1313 | 2009-08-15 15:01 | 文男さんのこと | Comments(3)

夕日

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淡水に来た理由の一つは夕日を見ることだった。
夕日は川に沈むときに、水面を金色に染める。

かつて石垣島の海岸で見た夕日は、大海原を金色に染めて光り輝いた。
波のしずくは、金の粉が撒き散らされるようだった。
金と赤に染まった海水が静かにうねり、様々にフォルムを変化させた。

ここ淡水でもすばらしい夕日が見られると聞き、期待しながら夕方を待った。
だんだん空がかげってきて、急に雨がぱらぱらと落ちてきた。
気を揉んだが雨はすぐやみ、雲が切れてきた。

川べりの遊歩道やベンチに人が集まり始めた。
若者のグループは、わいわいと楽しそうに遊びながら待っている。
墨染めの衣を着たお坊さんや、尼さんの集団まで来ている。

みな少しでも眺望のいい場所を確保しようとして、人が鈴なりになっているところもある。
若いカップルは少し離れた静かな隅で身を寄せ合い、まもなく始まるロマンティックな時間を待っている。

やがて船着場からは大勢の人を乗せた、夕日鑑賞クルージングが出発した。


夕日が周りの雲をいろどりながら、沈み始めた。
あたりの喧騒がいっとき静まり返った。
# by bajiao1313 | 2009-08-13 17:37 | 台湾 | Comments(2)

淡水

地下鉄の台北駅から淡水線に乗って、40分くらいで終点淡水の駅に着く。
途中から地上に出るので、周りの風景を楽しむことも出来る。
剣潭駅からは美食広場の大きな建物が見える。
ここから台北一の規模を誇る士林夜市の賑わいが始まる。
大きな体育館のような広い空間に、各種各様のおいしい食べ物屋がつまっている。
この夜市の紹介はまたいつか。

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淡水は淡水川の河口の町、古い歴史がある。
駅を出ると、目の前から公園になっていて、遊歩道が整備されている。

大きな川が海に流れ込む雄大な景色は水墨画のようだ。
対岸の山々はかすみ、川の流れはゆるやかで風情がある。
岸辺に水が打ち寄せ、ピタピタという音がする。
空気がしっとりして、潮の香りが混ざっている。

道に沿って食べ物屋が多く、初めて飲んだ酸梅湯はやさしい味だった。
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しばらく散歩した後,渡し舟で対岸の八里にわたった。
にぎやかな淡水と違って、こちらはのどかな田舎の景色だ。
自転車を借りてサイクリングに出かけた。

時期は1月末だったが、晴天のため太陽はまぶしく暑いくらいだ。
家族連れや子どもたちが大勢遊びに来ていた。春節前の休暇であろう。

サイクリング道路ができているので走りやすい。
海の見えるところまで行ってみることにした。
古いお寺や風情のある民家などを通り過ぎ、マングローブの林を抜けると、
広い道に出て、かなたに立派な”十三行博物館”が見えた。
もうその先は海だ。
子どもたちが大勢博物館に入っていったが、私達はそのまま道を引きかえした。

しばらく走った後、公園の前で休憩した。
子どもたちが遊具で遊んでいる。
その様子がかわいらしくて、見とれていると、
小学生くらいの男の子が自転車でそばに来て話しかけてきた。
今だからことばにできるのだが、

「阿姨!,十三行、哪边好吗?」
(おばさん、十三行博物館は、あっちでいいんですか?」
と言ったのだった。
そのころはまだ「うん、うん」とうなずくことしかできなかった。
ことばができないとせっかくの出会いを逃してしまうと、つくづく残念に思ったのだった。

八里の船着場付近まで戻り、レンタル自転車を返した。
このあたりにはシーフードのレストランがたくさんある。
「孔雀蛤一斤300元」という看板があちこちで見られ、貝が水槽に入って売られている。
孔雀蛤とは、大型のムール貝。
貝殻は虹色に光る深緑色で、陽が当たるときらきらして美しい。
その貝をにんにく、唐辛子、バジルをたっぶり入れて、炒め煮にしたものがここの名物料理だ。

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テラス席の空くのを待って注文した。
運ばれてきた貝は大皿にたっぷり、貝殻を捨てる容器は洗面器のよう。
涼しい風にふかれながら料理を食べた。
天気は良いし、景色はすばらしい、絶好の休暇日和だ。
気が大きくなり、その他にも蟹と卵の炒め煮、蛤のスープ、青菜炒め、チャーハンなどを
どんどん注文し、豪華なお昼をゆっくり楽しんだ。どれもとてもおいしかった。

淡水に来た目的の一つは夕日を見ること。
天気がいいので期待できそうだが、まだまだ陽は沈まない。
昼食後はレストラン前の公園の芝生で昼寝をした。
昼寝ができるほどの温かさ(暑さ)で、1月末の気候とは思えなかった。
(続く)
# by bajiao1313 | 2009-08-08 14:51 | 台湾 | Comments(0)

多少钱?

「多少钱?」(どうしゃおちえん)おいくらですか?

まだ中国語の勉強を始めていないころの話。
6月はじめに台北旅行をした。

毎日天気が良く、真夏のような暑さだった。
着ていた木綿のブラウスがすぐに汗を吸って重くなり、
風通しが悪くて熱がこもってしまう。

建物の中は冷房が強くて寒いくらいだし、外は猛暑。
長袖ブラウスは必需品だ。
街歩きのために、涼しいブラウスとズボンを買うことにした。

といってもデパートや洋品店には行かない。

若いころはよく山に行ったので、当時衣類はアウトドアの店で調達した。
登山用品は品質がよく、丈夫で長持ちする。
高価だが、何年も着られるから、結局はいい買い物になる。
今でも私の衣類の多くは登山用品の店で買う。

台湾の中央部には山脈があり、玉山、阿里山など有名な山があって登山人口は多いらしい。
そのせいか、台北駅に程近い中山北路一段には何軒も登山用品店がある。
今回初めて台湾のアウトドアの店で買い物をしてみた。

1階は登山靴やザック、ロープなど本格的な登山用品を陳列しているが、
2階は様々な衣類を豊富に品揃えしていた。
ズボンはちょうどいいものがあったので、すぐに決めた。

そして長袖ブラウスはないかしらと探していると、
壁に飾ってあるピンクのブラウスに目が釘付けになった。
色、デザイン、大きさはぴったり。
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試着すると、軽くて薄手の布地は感触がよく、体に吸いつくような着心地だった。
気に入ったので買おうと思い、値段を見るとやはり結構高い。

でも、品物のよさは問題ないし、こういう店で値引きできるとは思わなかったので
定価のまま買うつもりだった。

お店のおばさんは日本語が全くできない。
私のことばを聞き取ろうとして一生懸命だ。
カウンターにズボンとそのブラウスを持っていった。
2点買うと結構な値段になる。
そのとき私は独り言をつぶやいていた。

「どうしょうかな?2枚とも、買おうかな?どうしようかな‥‥」
するとおばさんは急に電卓を出してなにやら計算し、ブラウスを2割引にしてくれたのだ。
ラッキーな出来事でとてもうれしかったが、なぜ突然値引きしてくれたのか、
その急展開がなぞだった。
もしかしたら‥‥と先日思い当たったことがある。

「どうしようかな?」が”多少钱?” 「買おうかな?」が”可以吗?”
に聞こえたのではないか。
おばさんは私の日本語を「おいくら?いいですか?」と中国語で聞き取り、
値引きを要求していると思ったようだ。

ブラウスは今でも新品同然。お気に入りで大切に着ている。
# by bajiao1313 | 2009-08-04 16:29 | 台湾 | Comments(3)

なつかしい国、 大好きな台湾の紹介と、日々心に響いたことを綴っています。夢は台湾一周一人旅。実現に向けて中国語を少しづつ学んでいます。日本人です。


by bajiao1313
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