豆花

梅雨が明けて、いよいよ夏がやってきた。
日傘をさしていても、太陽の熱がじりじりと肌を焼き、汗が流れ落ちる。
こんな風に暑い日は、“豆花”をおもいだす。
豆花は「とうほあ」というやさしい響きのことば。

台湾の人たちが好むデザートの筆頭に上げられるのが豆花だ。
見た目は絹ごし豆腐のようだが、もっと繊細な食べ物だ。
とうふのプリンといった感じで、水気が多く柔らかく、フルフルと崩れてしまいそう。
飲み込むときに、のどをスルリと滑り落ちていく感触がたまらない。

豆花は大きな鍋に入っている。
それを容器にすくい取る。
上に甘いトッピングをのせてもらう。
小豆、緑豆、白いんげん豆、落花生、タロイモの団子、大粒のタピオカ、蓮の実などがある。
最期にシロップをかけてできあがり。レンゲで口に運ぶ。
口当たりは柔らかくのど越しは最高。
トッピングのタピオカやタロイモのもちもちした甘さもおいしい。

冷たいものが多いが、一度だけ双連朝市で熱々の豆花にであった。
豆花売りのおじさんは、豆花の入った大缶、熱い生姜汁の入ったやかん、
煮た落花生の入れ物だけを道端に置いて、実にシンプルな商売だ。
大缶には赤い字で「豆花」と書かれ、看板にもなっている。
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その朝、私は寝不足で元気がなかった。
フーフーしながら豆花を食べ、シロップをすすった。
生姜が強く香り、落花生は舌でつぶれるほど柔らかかった。
食べ終わる頃には体が温まって、しゃきっと元気になった。
あのおいしさが忘れられず、いつもおじさんの熱い豆花を探すのだが、
なかなか出会うことができないでいる。

# by bajiao1313 | 2009-07-16 15:54 | 台湾 | Comments(5)

自助餐

私は野菜が大好きなので、旅先で野菜不足になるととても辛い。
道端の雑草でさえ菜っ葉に見えて、食べたくなってしまうほどだ。

子どもの頃から好き嫌いがなく、何でもおいしく食べてきたが、
年をとるほどに野菜のおいしさが、ありがたく感じられるようになった。
旨みは甘みにつながるが、どの野菜にも特有の甘みがある。
それらはとても微妙で、いくら食べても飽きることがない。

台北も野菜が豊富。市場では様々な緑色の野菜が美しく並べてある。
あるとき野菜市場を通り抜けようとしたら、おばあさんが2人でしゃがんで何かやっていた。
汚い葉を取り、長さを揃えて青菜の小さい束を作っている。
楽しそうにおしゃべりしながら、ていねいに作業していた。

「ああ、いいな」私もおばあさんになったら、こんな風に働きたいと思った。
市場にはおいしい食べ物がたくさんあるから、一仕事したあとは屋台でご飯食べて、
果物をつまんで‥‥。役に立つし、「いい仕事だなあ」と思った。

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台北の町はあちこちに”自助餐”と書いた看板の店がある。
セルフサービスの惣菜お持ち帰り店である。
一軒として同じ店はなく、どの店も個性豊かなメニューと味で勝負している。
野菜料理が豊富なので、野菜をたくさん食べたいときに便利だ。
好きな味、量を選べるのでありがたい。

持ち帰りは”帯走”という。
入り口で容器を取り、まずご飯をつめてもらう。
そこへ好きなおかずを指差して入れてもらう。自分で入れる店もある。
種類が豊富な上、どれもおいしいので迷ってしまう。肉や魚もある。
ご飯とおかず4,5種類で80元くらい。大体350円くらいでお腹一杯になる。

店には、小さいテーブルと椅子があり、食べていくこともできる。
大きな鍋にはスープ類が入っていて、これは無料である。

行天宮近くには、素食(精進料理)の自助餐店がある。
野菜が中心だが、巻き寿司や蕎麦料理、湯葉揚げ、”潤餅”など
種類が豊富でとてもおいしかった。
珍しいのは、魚や肉に似せた「もどき料理」。
きのこや海草などを使って作るらしいが、見た目も、歯ごたえ、味もそっくりで驚く。

そのときのサービススープは、緑豆のスープだった。
緑豆が体の熱を取るから、暑い時期に好まれるスープだ。
さっぱりしてほんのり甘く、私は大好きなのだ。

容器に入れる順番を待っていると、
鍋底に沈んでいる緑豆をお玉で真剣にさらっていたおばあさんは、
持ち帰り用のビニール袋に豆をたくさん入れていったので、
私の時にはほとんど豆のないさらさらスープになっていた。
ちょっと残念だった。 

# by bajiao1313 | 2009-07-14 15:58 | 台湾 | Comments(2)

葡萄棚

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昔はあまり果物が好きではなかったが、今はよく食べるようになった。
柔らかくみずみずしく、消化がよく、甘くておいしい。種類が豊富で味も様々。
すばらしい食べ物だと思う。

子どもの頃我が家には、立派なぶどう棚があった。
器用な父が趣味で栽培していたのである。
春、白い小花が咲き、初夏1センチくらいのぶどうの赤ちゃんがたくさん出てくる。
それが日に日に大きくなって夏の終わり頃には、黄緑に透きとおるマスカットが実った。

甘い香りが漂い、蜂が集まってくる。食べごろになった実から小刀で房を切り取って食べる。
重い房をてのひらに乗せ、そっと切り取る。
いつも有島武郎の“一房の葡萄”という小説を思いだした。

収穫期はいっせいに熟す。毎日、毎日たくさんぶどうを食べた。
うちのぶどうの食べ方は種を出さない。
一粒ずつ出していたのではたくさん食べられないので、
父が「本場の食べ方は種を出さないんだぞ」と、種ごと食べるように命令する。
ぶどうでお腹が一杯になる日が続く。

もちろんご近所にお裾分けをする。子どもの役目で、何回も配りに行かされた。。
それでも余ったぶどうを、あるとき母が「試しにぶどう酒にしてみよう」とガラス瓶に仕込み、
押入れにしまっておいた。
忘れた頃‥‥、突然押入れから「ボン!」と破裂音がして、皆びっくりして腰を浮かした。
きつく栓をしていた蓋が醗酵したガスで飛ばされたのだ。
おそるおそる飲んでみたら,とてもおいしかった。

果物の価値に目覚めたのは、10年ほど前フィリピンに2週間ほど滞在したときのこと。
当地の福祉施設を巡る学生のための研修旅行だった。
私もおばちゃん学生として参加した。

宿舎の食堂では、毎回心のこもった食事が供された。
食べ物は質素だったが、豊富な果物がいつも山盛りになって置かれていた。
暑い国なので水分と甘味をしっかり摂らなければいけない。
食欲のない日でも、必ず果物は食べるようにした。
フィリピンの果物は味が濃く、すぐに栄養分として吸収されるようだった。
特にバナナとグリーンマンゴーがおいしかった。
グリーンマンゴーの酸味が疲れた体をすっきりさせてくれた。

現在は毎日必ず果物を食べるようにしている。
面白いのは、時期によって食べたい果物が違うことだ。
今年の5月ごろは夏みかんがおいしくてたまらなかった。
昨日は桃を食べた。どうしても食べたいと、無花果に手が出ることもある。
体がほしがっているのだと感じる。

# by bajiao1313 | 2009-07-11 11:00 | 文男さんのこと | Comments(2)

夜市

ぶらぶら歩いていると、街角に赤いちょうちんがたくさん見えた。
なんともいえない、おいしそうな匂いが漂ってくる。
夜市(イエシー)とはちょうど縁日のようなもの。
様々な食べ物の屋台が並ぶ。

夕方、車の通行は閉鎖され、歩行者天国のような按配で道路が広い空間になる。
そこへびっしりと屋台が出る。一軒一軒の店は小さく、曳き売りのおでん屋程度。
それが何十となく並ぶ様子は華々しく、おのずとお祭り気分になってくる。

屋台は食べ物だけではない。おもちゃ、安物の腕時計、装飾品、得体の知れない飾り物、
健康グッズ、玉類、茶器、文房具、かばん、洋品、何でもそろう。
下着屋は真っ赤なパンツの大売出し。
若い女店主が3枚手に持って高く掲げ、「買って、買って、お徳だよ!」と叫んでいる。
こちらでは赤い下着がたくさん売られている。赤い色は好まれる上、からだを暖める効用があるそうだ。

人々が狭いすきまを、そぞろ歩きしている。
胡椒餅の店は、焼き上がりを待つ長い行列ができている。
こんなところまでバイク入り込んですり抜けていくが、みな気にしない様子で道を譲っている。
足元には犬がうろうろ。

ゲームのコーナーも充実している。
ドラえもん、ちび丸子、キティちゃん、などのキャラクターとたくさん出合える。
家族連れも多く、一家揃ってゲームに興じている。
時には子どもそっちのけで太鼓叩きのゲームに熱中するお父さんもいる。
射的、ボールすくい、スノーボール、パチンコ、数が多くて覚えきれない。
「エビ釣り」というものがあるそうだ。釣りあげたエビは焼いて、その場で食べられるらしい。
エビにとってはたまったものではないが、一度試してみたいものだ。

臭豆腐の強烈な臭気が夜市全体を包み込んでいる。私はこれが大好き。
台北に来ると何はともあれ、臭豆腐を最初に食べる。
台湾の人々もまたこの食べ物が大好きで、人が食べているのを見るとたまらなくなるらしい。
私の皿をチラッと見ては買い求め、たちまち私のテーブルの周りは、
“臭豆腐愛好者の集い”のようになってしまった。
若者グループがわいわいおしゃべりしながら、実においしそうに食べている。
口に入れた瞬間、感に堪えないという面持ちで陶然としている。

線麺(柔らかいそうめん)の屋台では、おばあさんと中年の婦人が、
麺、青菜の炒め、煮込んだ肉などを分け合って食べていた。
屋台は老人でも食べられるものが多い。
だからお年寄りの姿も多いし、車椅子の人もみかける。

それで想いだしたが、地下鉄駅「双連」の近くに馬偕医院という大病院がある。
そのすぐ裏にも市場があるのだが、あるとき、
「パジャマ姿で点滴ポールを押しながら、食べ物を見つくろっているおじさん」がいてびっくりした。
でも考えてみれば、確かに病院の食事よりはずっとおいしいに違いない。
まずリハビリになるし、栄養もつき、夜市の活気も吸収して、早く回復するはずと妙に納得した。
さすがに食べ物にこだわる台湾の人らしい。

台北市内で毎日盛大に開かれている観光夜市は、7箇所くらいあるようだ。
でも、少し歩けば地元の人たちが通う小さい夜市がたくさんある。
それぞれ特色があって、観光夜市より私は好きだ。
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# by bajiao1313 | 2009-07-06 10:50 | 台湾 | Comments(5)

果物

水果と書いて「しゅいぐお」と読む。中国語で果物のことである。
南の国は果物が豊富だが、台湾にも様々なおいしい果物がある。
専門の市場があるくらい、人々から愛されている。
朝市からの帰り、両手に果物の入った袋を下げてゆっくり歩いているおじいさんがいる。
お年寄りの口にも合う食べ物なのだろう。
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果物屋も多い。一口サイズに切った果物盛り合わせは、色々食べられてありがたい。
メロン、西瓜、その他名前も知らない果物が盛られている。どれもみずみずしくて甘い。
道端で売っている串刺しプチトマトは、半分に割って中にプラムが挟んである。
赤と黒の配色がすてき。甘酸っぱく、歯ごたえもいい上、とても安い。
果物を食べると、いっとき暑さを忘れる。疲れもとれる。

蒸し暑いある日、国立歴史博物院の裏にある大きな公園で休んでいた。
木陰の涼しい場所を探し、ベンチに座って池を眺めた。
水面には子魚が群れ泳ぎ亀も首を出し、一面の蓮の葉が清々しい。
蓮の花がたくさん咲いていた。

池の端に画材を広げて水墨画を描いている人がいる。
太い筆に墨をたっぷりと含ませ、葉と茎を一気に描く。花にはそっと桃紅色を差す。
何枚も何枚も、描き続けていた。

近くのベンチでは、休憩している2人連れの紳士が、おもむろに袋を取り出した。
中にはたくさんの荔枝(ライチ)が入っている。
ゆっくりおしゃべりしながら枝からもぎり取り、皮をむいては口に入れている。
あまりにもおいしそうなので、帰りに市場に寄ることにした。

大好きな晴光市場へ行ってみた。
荔枝売りのおじさんが、荷車に荔枝の束を積み上げ、お客を待っている。
近所の奥さんたちが次々と買っていく。評判のいい店らしい。
ずっしりと重い束に大きい実がたくさんついている。きれいな赤い色。
おじさんは「種が小さくて甘いよ」と言っている。

まず、「どれにする?」と聞かれる。「これ」と指差す。秤にかける。「120」と値段を言う。
そこでちょっと黙って待つ。すると「100」と負けてくれる。「買います!」
と、こういう順番で、奥さんたちが買っていた。私もまねて一束手に入れた。
うれしくなり「谢谢」と笑いかけると、おじさんもにっこりしてくれた。

果物の女王とも言われる「ドリアン」は、よく見かけるがどれも大きくて手が出なかった。
スイカくらいの大きさ、棘がたくさん出ているごつい果物だ。
あるときデパートの食品売り場で、小さくパックされたのを見つけた。
高かったがためらわずに買い求めた。
期待と一抹の不安と、わくわくしながら厳重に包んであるラップをはがしていく。

さて、ドリアン初体験の結果は‥‥
あまりの甘さと匂いのきつさに、4口くらいでギブアップした。
慣れればおいしくなるのかもしれないけれど。
でも処分に困った。強烈な匂いなので、部屋に置けない。
思い余って、もう一度しっかりパックしたものを部屋の冷凍庫に入れた。

そして、‥‥そのまま部屋に忘れてきてしまったのだ。
空港に向かうバスの中ではたと気がついたがどうしようもない。
後で知ったが、ドリアンは冷凍するとおいしいそうだ。
次にあの部屋に泊まった人は喜んだろうか?ショックを受けたろうか?

# by bajiao1313 | 2009-07-03 11:23 | 台湾 | Comments(4)