
午前中いっぱいゆっくりとお寺を見て過ごした。
五百羅漢が収められた大きな部屋があり、
表情豊かな仏像の一体一体を見てまわった。
赤い衣服を着けた中高年の女性が、
庭や建物の中に何人もいて、
出たり入ったりしている。
いろいろ手伝い(ボランティア?)をしてるのだそうだ。
寺の裏手にある大きな食堂からはいい匂いがしていた。
「一般の人は食べられないの、お金のない人が奉仕して、
その報酬として提供されている」
と教えてくれた。
器に入れてもらって運んでいる人もいた。
中国の食事はおいしそう。
だんだん昼に近くなりわたしもお腹がすいてきた。

「お昼は家の近所の食堂に行きましょう。
焼き肉としゃぶしゃぶと、どっちがいいですか?」
「どちらも大好きですよ、任せます」
タクシーで家の近くまで戻り、焼き肉店に入った。
テーブルにつき、メニューを見ていると、
友人の夫がにこにこして現れた。
わたしが滞在する一週間、彼は休暇を取ってくれていた。
「一緒に楽しみたいからね」と言う。
彼は33歳、博士号を持つ医者。専門は肺癌治療。
元々は物理の勉強を修め、
その後北京で放射線治療の勉強をして医者になった。
そのため外科治療ではなく、放射線治療を行う。
年間何千人もの患者を診ているそうだ。
「人の役に立つ仕事ですからね、ずっと続けていきたい」
病院は歩いて家から歩いて15分ほどの場所にある巨大な建物だ。
毎日午前中は病院に顔を出していたが、
午後はあちこち連れて行ってくれた。
夕食も、夜も一緒に過ごすことができた。
頭脳明晰なのだろうけれど、
そういう感じを少しも見せず、
やさしくて親切、細やかな心遣いをしてくれた。
東京の大学に3年間いたので、日本語がうまい。
若者と色々な話ができてうれしかった。
2歳年下の友人は美術大学を出て、
室内装飾の仕事を自営している。
彼女は「この一週間の仕事は〇〇さんのお供、
自由業だから休んでも大丈夫」と言ってくれた。
それにしても、まさかこれ程まで面倒を見てもらえるとは、
思ってもみなかった。
さて料理の数々。
串焼きは3種の肉。
羊、牛、豚、甲乙つけがたいが、
特別おいしいのは、やはり羊。
たっぷりかかった香辛料がすごくおいしい。
相当辛い。
ニラは長いまま。
ピータン入りのお粥。
どれもおいしく,わたしの好きな味だった。
お腹いっぱい食べて家に戻った。
部屋に戻って休む前に、龍眼(りゅうがん)を食べる。
味は茘枝に似ている。
わたしはこの果物が大好きだが、
食べ過ぎると、「上火」・のぼせてしまうそうだ。